PSI Vol.5, No1 August 1980 Foreword pp1.
 巻頭言

小牧氏全 生 物 の 平 和
Peace of AII Living Things

こまき ひさとき
小牧 久時*

 私は、子供のころから、お魚にも人間にも同じように目があるのを見て、『もしも僕がお魚だったら、つり上げられて、人間に食べられるのは、いやだろうな。苦しいだろうな』という、切実な思いがあっ たのです。
 しかし、栄養のために、お魚やお肉を食べなけれならないのだと思っていました。
 ところが、櫻沢如一先生の所説にふれて、お肉もお魚もいらない、ということを知ったのです。
 動物性蛋白質以外の栄養素は、脂肪であれ、炭水化物であれ、ビタミン類であれ、ミネラルであれ、その生産効率の上からも、又、質的にも、植物界に仰ぐほうが良い一ー否、植物界においてのみ生産されるといってもよい一一ことは、誰でも知っている。
 動物がそれにもかかわらず、過去において、人間の食生活に役立ってきたのは、植物が生産する必須アミノ酸を、動物が(みずからのために消費しつつも)濃縮するという役割を果してきた点に在った。
 ところが、現今においては、植物が生産する必須アミノ酸を(上記の理由で、ロスの多い動物を用いずに)、より一層、効率的に濃縮する方法が確立ずみである。
 動物などというものは、機械であって、心は無いのだ、という考え方もあるようであります。
 しかしながら、ごく常識的に考えれば、人間も動物も、同じような、神経細胞から、成り立っており、進化ということがあるにもせよ無いにもせよ、生物化学的にも電気化学的にも、神経細胞の基本的構造は同一でありますから、動物にも心があると思うのであります。
 とくに、哺乳動物は、ひじょうに発達した大脳をもっておりますから、痛みとか苦しみといった「感覚」はもちろんのこと、ある程度までは、人間に似た「感情」のようなものさえもあるかも知れません。
 次に、哺乳動物以外の動物ーーたとえば、お魚などーーには、発達した大脳はありませんから、人間のような「感情」は無いと思いますが、痛みや苦しみの「感覚」は、ありそうにも思うのであります。
 そこで、とにかくも、哺乳動物の殺害は、今、即刻、やめるべきであると思います。そうして、将来は、すべての動物を、なるべく殺さないようにする、ということが人間の理想でなければならない、と思います。
 私たちは、あまりにも人間中心に、ものを考えすぎています。
 実際には、人間よりも、動物のほうが、その個体数は、はるかに多いのであります。
 そうして、地球は、今日までのところ動物たちの、痛みと苦しみの無言の「阿鼻狂喚」に満されています。
 しかも、自然界においては、大脳の発達している哺乳動物の殺害は、少いのです。
 それゆえ、人間さえ哺乳動物の殺害をやめれば、『あらゆる生物の平和』は、八割方実現します。人間こそ、動物に対する最大の加害者であるからであります。
 それは、ともかくとしても、肉体の健康のためにも、精神の幸せのためにも、お肉もお魚も食べないほうが良いとするならば、こんなに結構なことはない、全くすばらしいことである、と思います。
* Dr. Hisatoki KOMAKI 生物農業研究所長、小牧久時平和財団理事長

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