PSI Vol.1, No2 September 1976 Foreword pp1.
 巻頭言

橋本氏科学効果ということ*
橋本 健**

 スプーン曲げのできる少年が居る。彼はスプーンの根本を持っているとやがてスプーンがアメのようにやわらかくなり、やがて一振りするだけでプツンと折れてしまうすばらしい超能力の持主である。
 しかし科学者としてはできるだけこの現象を“科学的”に調査研究をしてそのメカニズムをさぐりたい。そこで、ストレーンゲージ、TVカメラ、VTR、高速度カメラなど色々な科学的測定器を駆使し、また科学者も大勢立ち合ってもらい、超能力現象が“科学”で認められるかどうか科学的厳密な実験をしてもらうことにする。
 ところがどうしたことか、厳密な測定器を並べれば並べるほど、超能力なんかあるものかと思っている科学者がたくさん目を光らせて見つめれば見つめるほど、彼の超能力は出てこない。少年はあせる。彼のステージママやステージパパはどうしたのかと気をもむ。心ならずも少年は下手な手品をやってしまう。下手な手品は忽ち見破られて、デカデカとマスコミが騒ぎたてる「やっぱり超能力はインテキだった!」と、心霊研究の歴史はほとんどこのような事のくり返えしであった。近くはあの有名なユリ・ゲラーでさえも、週刊朝日の編集部では全く超能力が発揮できなかったという。
 私は昔ラインハートという霊媒の心霊物理実験に立ち合った。このときステレオのテープレコーダを用意して、ダイレクトボイス(空中から直接霊の声が出る現象)を録音しようとした。霊の声はたくさん出て録音できたが、それはキヤビネット(黒い幕の室)の中から出るもので、空中から出るものではなかった。たった一度だけ、ラインハートがキャビネットから出て、日本語ですばらしいダイレクトボイスが出た。しかし残念ながらこの時ちょうどテープがなくなって、次のテープに入れかえる途中であって、この声は録音されなかったのである。
 最近私はハリウッドで私の作った四次元波受信機をサボテンにつなぎ、サボテンと人間との会話を映画にとった。テストでは非常にうまくサボテンは家内の呼びかけに答えてくれたが、本番になってカメラが回り出すと、トタンにサボテンの声は弱々しくなってしまった。テストの状熊を90点とすると本番では65点位になってしまった。
 あらゆる超常現象はこういう性質を持っている。即ち、科学的であろうとすればする程(科学的測定器や記録装置を並べれば並べるほど)現象は起きにくくなる。何故か?現象は心の影であり、三界は唯心の所現であり、実験者の心が、核実験物に極めて大きな影響を与えるからである。私は前に心霊現象における不確定性原理を提唱した。が
(1)ここに「科学効果」なる言葉を提唱したい。科学的測定器は「疑いの心」の結晶であるから、科学的ならんとすればする程、起常現象は起きなくなってしまうのである。したがって超常現象を研究せんとする人は、従来の「疑うことによって科学は進歩する」という単純な科学的態度に検討を加えなければならない。超常現象は従来の科学の延長線上にはないのである。新らしい科学的態度…超科学的態度とは如何にあるべきか、これを考えるのも我々の使命である。
(1)超科学創刊号
* "About The Science Effect."
** Dr.Ken Hashimoto (President of the para science lnstitute.)

The museum of kokoro science
PSIJ